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刀の再登録で都庁へ。アナログの中にある専門性と、ビジネスの可能性

都庁での刀剣再登録、予想外の混雑と待ち時間

本日、私は所有する刀の再登録手続きのため、東京都庁へ足を運びました。刀剣の所有者にとって、登録は法律で定められた重要な義務です。この手続きは、文化財保護法に基づき、美術品として価値のある刀剣を適切に管理し、後世に伝えていくために不可欠なものです。

都庁に到着してまず驚いたのは、その混雑ぶりでした。平日の昼間にもかかわらず、手続きを待つ人々で会場はごった返しており、その熱気に圧倒されます。刀剣文化への関心がこれほどまでに高いとは、正直なところ予想していませんでした。待合室には、私と同じように刀を大切そうに抱えた人々が静かに順番を待っています。その光景は、現代の東京の喧騒の中にあって、まるで時代が遡ったかのような不思議な感覚を覚えさせました。

残念ながら、会場内での写真撮影は許可されなかったため、手続きの様子を記録に残すことはできませんでした。そのため、建物の外観写真だけが、この日の記録として手元に残っています。内部の独特な雰囲気や、専門家たちが真剣な眼差しで刀剣を鑑定する様子をお伝えできないのは、非常に心残りです。

手続きが完了するまでに要した時間は、なんと約2時間。この長い待ち時間は全くの想定外でした。もしPCを持参していれば、この時間を有効活用できたのにと、心から後悔しました。しかし、この待ち時間があったからこそ、周囲の人々の様子や、手続き全体の流れをじっくりと観察することができ、多くの発見があったのも事実です。

専門家が二人一組で挑む、アナログ作業の神髄

登録手続きの核心部分は、専門家による刀剣の審査と測定です。この作業は、驚くほどアナログな手法で行われます。専門家が二人一組となり、一本一本の刀と真摯に向き合います。

まず、刀が鞘からゆっくりと抜かれ、その姿が露わになります。専門家の一人が刀身の長さを、専用の物差しを使ってミリ単位で慎重に測定します。次に、刀身の「反り」、つまり刃のカーブの度合いを計測します。この反りは、刀が作られた時代や流派を特定する上で非常に重要な要素です。測定器を当て、光に透かしながら、わずかな歪みも見逃さないように何度も確認する姿は、まさに職人技そのものです。

さらに、茎(なかご)に刻まれた銘(めい)や、刃文(はもん)、地鉄(じがね)の状態などを、鋭い眼差しで入念に確認していきます。これらの特徴は、刀工の名や製作年代、そしてその刀が持つ歴史的背景を物語る重要な情報源となります。専門家たちは、長年の経験と知識を総動員し、目の前の一振りが持つ固有の価値を正確に読み解いていくのです。

これらの測定結果と鑑定内容に基づき、登録申請書が作成されます。一つ一つの項目が手作業で記入され、最終的な確認が行われるのです。現代のデジタル化された社会において、これほどまでに人の手と目に依存した作業は非常に珍しいと言えるでしょう。しかし、このプロセスを見ていると、単純な非効率さとは違う、深い意味合いを感じずにはいられませんでした。これは、単なる計測作業ではありません。「人が測り、人が判断し、そして人がその結果に責任を持つ」という、専門性の高い世界なのです。この“人間の技術”が絶対的に必要とされる領域に、私は強く心を動かされました。

AI時代だからこそ光る、アナログな専門性の価値

今回の経験を通じて、私はひとつの確信を得ました。それは、AI(人工知能)の技術がどれだけ進化しても、人間の専門性が持つ価値は決して失われないということです。むしろ、AI時代だからこそ、その価値はより一層際立つのではないでしょうか。

刀剣の鑑定という分野は、その典型例です。刀身の長さや反りを測定するだけなら、将来的には高性能なスキャナーやAIで代替できるかもしれません。しかし、刃文の微細な揺らぎや、地鉄が放つ独特の輝き、そして刀全体から感じられる風格といった、数値化できない「感覚的」な要素を評価することは、現状のAIには極めて困難です。

これらの要素は、長年にわたって無数の刀剣に触れ、膨大な知識を蓄積してきた専門家だからこそ判断できる領域です。そこには、歴史的背景や文化的文脈への深い理解が不可欠であり、単なるデータ処理能力だけでは到底たどり着けない境地があります。

このように、ニッチでありながら高度な専門知識が要求される分野こそ、現代における大きなビジネスチャンスが眠っていると私は感じています。AIが判断しにくい、あるいは判断できない「グレーゾーン」にこそ、人間ならではの付加価値を提供できる余地が残されているのです。

アナログとデジタルの融合が拓く、新たなビジネスの地平

テクノロジーの進化が、人間の仕事を奪うという議論は後を絶ちません。しかし、私はそうは思いません。重要なのは、テクノロジーと人間の専門性をどのように組み合わせるかです。

例えば、刀剣の鑑定において、AIを活用して過去の膨大な登録データや作例を瞬時に検索し、専門家の判断を補助することは可能でしょう。これにより、鑑定の精度やスピードを向上させることができます。しかし、最終的な価値判断や、その刀が持つ物語性を評価するのは、あくまで人間の役割です。

アナログな専門性と最新のテクノロジーを融合させることで、これまでにない新しいサービスや事業を生み出すことができるはずです。刀剣の世界に限らず、伝統工芸、農業、医療、教育など、人間の経験や感覚が重要となる分野は数多く存在します。これらの分野において、“人の目”と“専門家の技術”という価値を核に据え、テクノロジーを掛け合わせることで、どのような事業を展開できるか。その可能性を考えると、未来が非常に楽しみになります。

今日の都庁での経験は、私に単なる手続き以上の、深い洞察を与えてくれました。テクノロジーが社会の隅々まで浸透する現代において、私たち人間が持つべき価値とは何か。その答えの一端を、アナログな作業の中に垣間見た気がします。この気づきを胸に、今後も新たなビジネスの可能性を探求していきたいと思います。

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